南大門焼失

                                                高野圭介



国宝1号
崇禮門=南大門が火事で焼失した。
2008年2月10日の夜のことである。

崇禮門は、朝鮮王朝時代以来600年の歴史を持つ、
ソウルで最も古い木造建築で、韓国の国宝1号。

爆発しそうな国民の怒りと、
惜しいあまり溜息をつくソウル市民の嘆きは、
いま益々高まり、収まる様子が見えない。

崇禮門の開放
事の原因と責任問題が取り上げられているが、
何より李明博次期大統領に責任があるだろうとも言われている。

それは、
2005年5月ソウル市長であった李明博氏は、崇禮門の開放を宣言し、
ソウル市民が自由に出入りする空間にしていく方針を明らかにし、
中央通路を開放した。


大統領の
就任式



折しも、
李明博次期大統領の就任式が2008年2月25日に挙行された。
皮肉な巡り合わせであった。

        
悼む集会
南大門はすでに塀囲いとあって、何も見えないと聞いて、
私は現場には行かなかったが、

南大門を悼む集会に、何万という人が集まり、
募金活動が行われていた。

追悼文が厳かに韻を踏んで朗々と読み上げられ、
天女の舞のように、踊っている。


私たちは立ち去りもせず、しばらく足を止めていた。